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東京地方裁判所 昭和42年(手ワ)5449号 判決 1968年3月14日

原告 後藤千寿子

右訴訟代理人弁護士 森武一

被告 山本工業株式会社

被告 東友商事株式会社

右両名訴訟代理人弁護士 飯沢進

主文

被告らは各自原告に対し、金六二八、〇〇〇円及びこれに対する昭和四二年一〇月三〇日から完済までの年五分の金銭を支払わなければならない。

訴訟費用は被告らの負担とする。

この判決は仮に執行することができる。但し、被告らにおいて金四〇万円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。

事実

一、原告の請求の趣旨

主文第一及び第二項と同旨の判決並びに仮執行の宣言を求める。

二、原告の請求の原因

(イ)  原告は被告山本工業株式会社振出の別紙目録記載の手形の所持人である。

(ロ)  上記手形は支払のため呈示されたが支払拒絶がなされた。

(ハ)  そこで、被告らに対し、請求の趣旨のとおり、上記手形の手形金及びこれに対する満期以後の日から完済までの年六分の割合による金銭の支払を求める。

三、被告らの答弁の要旨は次のとおりである。

(イ)  原告請求棄却、訴訟費用原告負担仮執行免脱宣言の判決を求める。

(ロ)  原告主張の請求原因事実は認める。

(ハ)  原告主張の本件手形は裏書の連続を欠くもので、原告はその正当な所持人ではない。即ち、

本件手形の被裏書人である「北海道拓殖銀行」の記載が抹消され、被裏書人欄に原告名が記載されている。

被裏書人の抹消は、裏書の連続の関係ではその裏書全部の抹消と解されるので右抹消によって当該裏書は手形面と常に記載なきものと同様になる。従って本件手形は裏書の連続を欠き、原告は正当な所持人ではない。

(ニ)  仮に前記主張が認められないとしても、本件手形は被告山本工業株式会社 (以下単に山本工業という)が被告東友商事株式会社(以下単に東友商事という宛に振出し、東友商事が訴外北海道拓殖銀行永代橋支店(以下単に訴外銀行という)に手形割引のため裏書譲渡したものであるが、原告は同人が社員として勤務する株式会社ラビアン化粧品本舗の経営者である友野清と共謀して、東友商事の代表取締役印等を奪い、同印鑑を使用して昭和四二年一〇月一九日何ら東友商事の代理権限もないのに、訴外銀行から東友商事の定期積金、定期預金、普通預金の払渡を受けて訴外銀行との取引契約を解約し、本件手形を含む五通の約束手形の返還を受けたものである。右手形返還の際訴外銀行か本件手形の自己の被裏書人の記載を抹消したのは、その抹消につき東友商事の同意を前提として抹消したもので、東友商事の同意もしくは追認がないから無効である。又、訴外銀行は前記手形を東友商事に返還したものであるが、原告らはそれを東友商事に引渡さず、原告において無権限で昭和四二年一〇月二一日原告名を被裏書人として記載したもので、原告は本件手形の取得につき無権利者なることを知る悪意の取得者である

四、前記抗弁に対する原告の答弁の要旨は次のとおりである。(ハ)の抗弁事実中手形の第一被裏書人欄の「北海道拓殖銀行」の記載が抹消されていることは認めるが、本件手形を東友商事から訴外銀行への裏書譲渡の際被裏書人欄を白地のまま交付し、同銀行は被裏書人欄に自己の名称を記入後、同銀行がそれを抹消して原告に譲渡し、原告が同被裏書人欄に原告名を適法に補充したものである。(ニ)の抗弁事実中原告がラビアン化粧本舗の社員であることは認めるが、その余の主張事実は全部否認する。

五、証拠<省略>。

理由

一、請求原因事実は当事者間に争いがない。

二、よって被告らの前記(ハ)の抗弁について判断するに、原告の所持する本件手形によれば、その第一裏書人欄には「東友商事株式会社代表取締役角田辰彦」と記載され第一被裏書人欄には「北海道拓殖銀行」の記載が抹消されて「後藤千寿子」と記載されていることが認められる、裏書の連続の有無の関係においては、抹消された記載はその抹消部分の記載が記載なきものと認めるべきであるから、本件手形の裏書は連続しているというべきである。

三、前記(ニ)の抗弁については、これを認めるに足りる証拠はなく採用できない。

四、よって、原告の本訴請求はいずれも理由があるからこれを認容する。

<以下省略>。

<以下省略>

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